藤十郎の恋・恩讐の彼方に
藤十郎の恋・恩讐の彼方に | |
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50年以上読み続けられている本は、本当に文体が綺麗だ。
恩を返す話では、返せない恩に焦る甚兵衛の最後まで惣八郎にかなわないその仁義を、忠行興の話では組織の長になったものの物悲しさと、そしてそこから狂って行く様子、誰が・何が真実かわからない不安があらわされていてどの時代でも人としての辛さが伝わってくる。
恩讐の彼方には罪の重さから罪滅ぼしのために愚直ともいえる行為をする市九郎の辛さがよくでている。そう、良い本は煮込まれたシチューのように、切なく、甘く、切ないとかそういう言葉ではあらわせないほど、自分の語彙の少なさをどうごまかせば良いの皮からないほど。
藤十郎の恋では転落を目の前に見てしまった藤十郎のもがき、そして誰かの成功が誰かを木津漬けてしまい兼ねない事、そういう摂理をだしている。
心が静かになる。