戦場のピアニスト
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切ない映画だった。
主人公は決して強い人ではない。
戦争と言う非日常的なことが、日常に襲い掛かってきた、一般人ではない一般人の不幸と、その後。
シュピルマンはポーランドに住むユダヤ人だ。
丁度ドイツが侵攻して迫害された時の話。
ユダヤ人の虐殺シーンは目を覆う所が多く、それでも、彼がピアノを通してなにか世の中を変えるのではないかとか、英雄になるのではないかと、思いながら見ていた。
しかし、彼は逃げるだけだった。
運よく命拾いした彼は、ゲットーに入れられ、そして、逃げ出し、ポーランド人にかまってもらった。そこで恋愛が起きるわけでもない。ただ、逃げ、そしてその先に彼は何を見ていたんだろう?彼は、何の未来を夢見ていたんだろう?夢なんて見てられなかったんだろうか。ただ、生きる為に。
目の前でポーランド人がドイツの病院や消防署を狙う。彼は、自分が狙われていないか、自分が見つからないか声を潜めるだけだ。それが、多分、人間の普通なのだろう。私たちは映画にヒーローを求めすぎている。奇跡を求めすぎている。
とはいっても、生きていること自体が奇跡だが。
これは実話を基にしたものだという。彼はヒーローになる気なんてさらさらないのだろう。最後、彼を助けたドイツ人の将校が、弟に「僕はシュピルマンを助けた」と命乞いをする。
ここでも、余りにも淡白な終わり方で、それが心を打った。悲しかった。彼に感謝はする。でも、何も出来ない。そして、彼はソ連の収容所で亡くなったという。そして、ピアノ。
なんのための戦争なんだろう?
誰かが、誰かを支配して、
隣の家の人の死体が街中に転がっていて
それを無視しなくては生き延びれない、
彼らはどんな未来を描いたのだろう?
シュピルマンのひげが伸び、生き延びる事に精一杯な姿は、神々しくもあった。命さえあれば。生きていく事があれば。広い野原に、安心して座れると言う、平和があれば。
望む物なんて多くないんだ、きっと。
友達は戦った。彼は、戦わなかった。
なんだろう、悲しかった。
平和ボケ、といわれても、意味が解からない私たちは
爆撃が耳元でならないこと、生きている未来がまだあることに、感謝するべきなのだ。