不毛地帯(1)
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これが、読み応えがある本なんだと思う。
本を読んでいるだけで、呼吸が聞こえて、寒さを感じる。
それってすごい文章の力だと思う。
山崎さんが書く大阪商売人は皆卑屈なほどに商売をし、高度成長期を楽しんでいる。
失敗する人もいれば、成功する人もいる。
だれもすかしていない。
そんな中、一人、壱岐という人はあまりにも固すぎてまじめすぎるんじゃないか?というような人物である。もちろん、そんなに良い人はいなかっただろう、いたかもしれない、しかし、抑留のつらさ、そして抵抗、集団心理の怖さ、それが全て伝わってきた。集団心理の怖さは文化大革命のワイルドスワンを思い出させたし、それが起きる極限の状態が解らないまでも伝わってきた。
これが、本、っていうのじゃないかな。
結局私は眠るタイミングを見失い、徹夜して読んでしまった。
それが、ほんの魅力なんだ。
一緒に脳内で考える。そうでないと、小説とはいえないと思う。
背景が聞こえるような文章が書ける作家に出会いたい。
はっぱの落ちる音がかすかに聞こえる作家に出会いたい。