美貌録

とにかく、思うことを何も気にせず、淡々と、書いてみる。

秋の街

秋の街
吉村 昭

中央公論新社 2004-08
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本屋さんに自分の好きな本を伝えたら、薦められた本。
初めて読む作家だ。

短編小説では、伝えたい事が多すぎて散文しがちな物が多い中、一人の視点を物語の中心とし、すっきり、ずっしりとした内容となっている。
文章も、非常に美しく、決して明るくはないが、読み応えが有る。

久し振りに、じっくり読んだ気分になれる本。

表題の秋の街では、刑務官が出所直前の人を街に出す話。
「戻ってくるなよ」と思いながら、規則を緩めるかどうか、そして、緩めた後の複雑な心境、そして安堵感、本当によく仕立て上げられている。
私が好きだったのは無菌マウスの話だった。
完璧な安全がいとも簡単に崩される話。


切なさを、淡々と書ける、よい本だった。