美貌録

とにかく、思うことを何も気にせず、淡々と、書いてみる。

恋愛中毒

恋愛中毒
山本 文緒

角川書店 2002-06
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甘ったるいものかと思ったら、そうではなかった。
それよりも、凄く裏切られた気分だ。

私と年の近い青年の悩みからこの本は始る。
読み進めると、全く違う、「地味な、愛人っぽい」女性の物語に、いつの間にかになっている。
それも、核心には触れない、狂気の境目に居そうな、そんな物語。
お金を持ってやな女になるのではなく、狂気の境目を歩く。

「過去にもしもを持ち出すな」と言う。
「それは、ただ、自分がいえなかったことに対しての逆恨みじゃないか」

「でも」と続く。
「あの時はあれしか道がなかった。でも、本当は」

そして、狂気の結末は、ものすごく衝撃ではない物の、何度か読み直さないと納得できないほど、切なくて、苦しくて、同調も共感も私にはなかったけど、ある日私もこうなるかも知れないと言う恐怖だけは残った。

読み終わった時に、スッキリした気はなかった。
でも、「乗せられたな」という気持ちは残った。

文章も綺麗だし、読み物としては美しいと思う。