美貌録

とにかく、思うことを何も気にせず、淡々と、書いてみる。

水曜の朝、午前三時

水曜の朝、午前三時
水曜の朝、午前三時蓮見 圭一

新潮社 2005-11
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おすすめ平均 star
star読みやすいけど泣けない
starシンプルだが、それ故に恣意的な物語
star少しがっかり

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帯に「こんな恋愛小説を待っていた」「泣ける」と書いてあったため、購入。
私は泣きたかったのである。自分より不幸な人を探して自分の幸福感を得るためではなく、ただ、誰かと一緒に涙を流したかったのである。

しかし、正直に言うと、この本では泣けない。

同じ境遇なら考えない事も無いだろうが、北朝鮮人と恋愛をし、「あなたを朝鮮人にはあげられないものね」という母の言葉に、多分泣ける人と泣けない人がいるとしたら、私はまったく共感も出来ないし、泣けなかった。

制約のある自由奔放の中で、彼女は結局制約から逃れられないし、それが仕方の無い事だとしても妥協の人生に共感は無い。それが悩みあぐねいた妥協ではなく、ただ、考える事から逃げ出したための妥協であればそれは小説ではない。

ただ一つ、いい言葉だと思ったのは
「人生は宝探しなのです。イヤでも歩き出さなければならないのだし、それなら最初から宝探しと割り切ったほうが楽しいには決まっているではないですか(中略)何にもまして重要なのは内心の訴えなのです。あなたは何をしたいのか。何になりたいのか。どういう人間として、どんな人生を送りたいのか」

主人公の人生を鑑みて、こういうことを言われるのは説教くさくて堪らないが、親から子に送る物としては仕方ないかもしれない。ただ、この言葉はそのまま私にも向けられるものであると感じる。それは彼女の人生からそれが出るのではなく、死に行く人が発する言葉として。